沖ヨガ修道場での一日

沖ヨガの特色は自分自身をより良い方向に変えるために、総合ヨガとか生活ヨガなどと称して心身や環境を総合してバランスをとることです。。 沖先生の晩年に発行されたパンフレット(1980年頃)には以下の内容で道場生活が紹介されています。沖ヨガ道場が無くなってずいぶん時間が経ちます。今でもそこで過ごした方々はすばらしいシステムであったこと、再現したいと望んでいますが、大変残念です。そこでは精神修養、肉体訓練は老若男女が一緒になって修行したものです(多い時は200名以上)。この沖ヨガのシステムをあまりご存知のない方もおられます。上記の当時沖ヨガ修道場で発行された資料から抜粋します。

今、これを読んでいると非近代的と言われるかもしれませんが、命の生きる力を発揮させる変化刺激、適応能力を身につけるためにこのようなカリキュラムで生活をしていました。この生活はずっと続くものではありません。自分の希望する日数だけ滞在します。滞在中は外部からの講師の方の講話があり、積極的に取り組めばこのような体験は日常ではまず不可能でしょう。イヤイヤなら地獄のようなものです。。そういえば辛くて道場から無断で帰った人もいました。後になって私の友人になり、沖ヨガ活動の中心になるのですが、自ら逃亡した〇〇ですと後日、沖先生に挨拶していました。

<< 起床 >

ある目的から、3時4時に起きることもありますが、普段は午前5時から5時半にかけて全員起床し、 身体を 浄めます。 洗面、 乾布摩擦、冷水摩擦をします。

<読経行法>

般若心経を読経します。 ここではおのおのの理解力に もとづいて般若心経を唱えますが、呼吸法として、また発声法として、また統一法として行います。 読経行法によって呼吸は長く深くなり、また丹田からの発声法を行うことにより心身統一が、安定力が高まります。 

<清掃行法>

ヨガは全生活を通じて求道せよという教えですから、清掃もたんに”そうじをすることではありません。 日 常生活をさせていただいている所、使用させていただいている一切のものに感謝し、心と生活の浄めを誓います。 

<ヨガ式マラソン行法水浴・滝行>

軽い柔軟体操を行ってから修道場付近の丘や山々ヘマラソンに出かけますが、どれだけの距離を走るかは本人の自由であり、無理に体力の限界を破らせることはしません。 また、逆走法、横走りなど独得の走法をしますが、 それは、あらゆる動きを禅定行とする練習で、 統一体、統一心、調和 (禅の三密) の体得のために走るのです。 マラソン (熱刺激) 後は、水浴 (冷刺激) をします。その後、朝食としてみそ汁を一杯いただきます。 みそ汁の中の生きた酵素は代謝を促進し、マラソンで出た塩分を補給します。また朝は体内の浄化作用が高まっていますから、食物を入れることよりも不要物を出すということに重点を置くという意味で、みそ汁一杯だけをいただくのです。 少量の食物が胃に入ることによって、腸のゼン動運動も促進されます。

<浄化行法>

身体面の浄化ということは、排便・排尿・排ガス・発汗、および残留エネルギーです。 すべての生物には、体外から栄養物を取り入れ、生活エネルギーにして不要な残留物を排泄するというエネルギーの出入りがあります。 この点人間の場合は文化生活をしていますので、エネルギ ーを残しやすく、また不要な残留物を出しきれずに毒としてしまいやすいので、これが心身の異常 (病気) 因となりますから、せいいっぱいの力をこめ、心身の不要物を出しきる訓練としての行法を行います。

<強化行法>

一日のスケジュールの前半の最後は、 強化行法です。 生命の働きは適応性の働きですから、楽なことだけをしていたら楽なことに順応してしまい、生命力は低下してしまいます。顕在の能力は、 実際にある潜在力の1/10以下だといわれますが、 あらゆる困難に見える種々の動作を行うことで、潜在力を引き出します。

また、個性別に弱さや歪みは異なりますから、その歪みを矯正する内容のことも行います。 また、強化法は体操をすることが目的ではなく、自分の体の状態を発見することと、心身の統一力、積極心を身につけるのがその目的です。

<食事休憩>

起床してから約7時間が過ぎたところで一区切りということになります。 12時半から午後1時にかけて、第1回目の食事をとります。

内容は、玄米、野菜、豆類・海藻、つけ物、野草、果実、山菜などの自然食で、献立は一日として同じことはありません。 変化させつつ、 バランスをとるのが自然法則に従うことです。食事は全員そろって合掌し、「栄養摂取の誓い」を行い、各自、自分に適したものを食べます。さて、食事の後約2時間休憩します。 この時午睡をとってもかまいません。 食事のあとはゆっくり休みリラッ クスして、身体が食事を消化・吸収することに協力します。 

<午後からの行法>

午後一番は、戸外へ出て自然に接し、スポーツをしたり、野草とり、散歩などを行います。 雨が降った時は室内で、体験発表会や輪読会などを行います。 野外で土を堀ったり、石を積んだり、畑仕事をしたり、また室内で月刊誌の原稿清書や発送の仕事をしたりする作業の時もあります。

<個人別修業-議義・質疑応答会>

戸外から帰って来て夕方からは、 個人別に必要な修業と、修正行法や改造行法の時間となります。 基本のアサナやプラナヤマ行法、また希望をとってサウナ・物理療法・武道・茶道・華道・ダンスなどいろいろなことを行います。もちろんこれらのことを通じて、心の持ち方・ 姿勢の取り方・呼吸の仕方ものの活かし方を学びます。 講義は、沖正弘導師による質疑応答会や、その他の講師 によって様々なテーマで人生全般にわたり、されます。 時には、修業生の人生経験豊かな人、珍しい体験のある人など様々な人々が、 お互い学び合い、協力し合うため交替で講義をする場合もあります。

<夕食 歌と笑いの行法、座談会>

午後7時頃に2回目の食事が出ます。 これはソバが一 椀で最後の食事です。ソバのほかウドン・パンおじや など軽いものが原則です。またこの食事はとってもとらなくてもよいことにしてあります。この夕食は、内臓に負担をかけないもの、消化の良いものを選んでいるわけですが、それは、夕食に消化と時間のかかるもの、交感 神経を刺激するものを食べますと、それだけ心身がくつろげず、睡眠も浅くなるからです。食後は、みんなで歌を歌ったり、笑いの練習(笑いの行法)などを行ったりします。夕食後の行法は、人々との接触、団らんの行法であり、自分を放下するとともに、じゅうぶんに人にも心を開放できるように努めます。座談会では、修業生が質問を出したり、それについての意見をみんなが言ったりして、いろいろと話をします。率直な意見が交換され、一人で考えていてもわからないことがわかり、またいろいろな事柄についての認識を深 めます。

<夜の冥想行法>

修道場での生活全体が、正しい感じ方・考え方・行い方ができる人間になるために仕組まれたプログラムですが、それはヨガのヨガたる唯一の行法である冥想行法の現実生活化ということにほかなりません。冥想行法は、統一・禅定・祈り三昧仏性啓発・法悦を一つにしたものです。ローソクの黒点やマントラを利用しての統一と放下(禅定・祈り)の練習が基礎です。

<入浴・感想文 就寝 >

入浴は、個人の選択と必要性で、水風呂・温冷交互浴・サウナ・酵素風呂・温泉・薬湯などいろいろが選べます。温冷交互浴は、自律神経の安定力を高めますので、入浴行法の基本となっています。

消燈 就寝までに各自は学習し、その日一日の講義や自分の修業などについて感想や反省を書き、頭の整理を行います。ヨガはすべてのことに心を結びつける心身一如の意識的生活と、知行合一の学び方を本旨としていますから、一事一事を教えとして反省し、分析し求道するのです。

以上にあげた日程はまったくの一例で、毎日変わりますし、あらかじめ修業生にスケジュールを発表することはありません。それはすでにわかってしまっているスケジュールは、修業生に”とらわれ、をつくりやすいからです。毎日変化させ、日程発表をしない原則で、慣れを防ぎ、適応力を高めるわけです。