重さを意識して動いてみよう

 ヨガのポーズや日常での生活の中でどのくらい重さを意識しているでしょうか。
 一番わかりやすいのは歩いているときだと思います。そのとき足の振り子を意識すると歩きやすいのがわかります。当然、そのとき腕は振り子になって足の動きとバランスをとっています。振り子は物体が位置エネルギーから運動エネルギーに変わるときの動きですから楽な動きになるのです。

 犬や猫、野生の動物は歩く時、足首から先が垂れるのを観察できます。足首の力が抜けていると重さで手先、足先は垂れます。その脱力は肩や腰に現れ、次の力強い大地を押す力(収縮力)に変わるのです。

 ネコのポーズでは丸ネコで背骨を持ち上げ、反りネコで背骨が垂れて背中を緩めていますが、必要なときに早く強く動くことのできる、背骨の力の源になっていると思います。

 次は人の姿勢についてですが、癖や筋力不足、精神的な思い込み、孤立感などで頭が垂れ、肩や背中が丸くなります。その姿勢は頭や肩などの上半身は重さに耐えられなくなって首肩の緊張は腰にも負担を強い、膝など全身に現れます。私たちの体は人類始まって以来、力強い筋肉が存在しているのです。
 私たちは100万年以上前に直立歩行に移行し30万年には知能が発達した現世人類になったといわれています。その過程ではまっすぐに立つための筋肉構造が出来上がりました。その筋は抗重力筋といって脊柱起立筋や腿の筋肉、お尻の筋肉、ふくらはぎの筋肉などは姿勢を保つために、緊張していても疲れない筋肉であり、それに反して、腕や背中の筋肉は大きなパワーがあってもすぐ疲れてしまうのです。背中を丸くして肩や背中に緊張したままでは耐えられないようになっています。

 ヨガのポーズをつくるときも、背すじ(特にうなじ)を伸ばして背骨をまっすぐにすると肩や腰はやわらかく動かすことができます。ヨガクラスで気になるのは頭を下に垂らしてしまう無意識の動きです。頭を垂らすと頭の重さ(体重の10%、5-6キロ)を支える肩の筋肉が緊張して動きも悪くなり肩の不快にもつながります。ヨガのポーズのとき、うなじを伸ばすことをしていると体は軟かく楽に動かすことができることが多いです。 

 呼吸も肺の重さの関係で、胸が立っているとき、横になっているとき、逆位になっているときで、肺の位置によって、吐く息、吸う息が変わることを理解しましょう。胸が直立に近い姿勢(立つ、座る)のときは吐く息は長く、吸う息は短くなります。しかしその逆にするとき、たとえば下向きの犬のポーズやウサギのポーズ、肩立ち、スキのポーズのときその吐く吸うは逆転します。(すなわち吸うのは楽で長い、吐くのは短い)日常で胸を逆にしていることはほとんどありませんが、喘息など気管支が細くなっている人は吐く息が苦痛となるので、このポーズを作ると、より一層つらくなるはずです。またそのような疾患のある人で発作が起きている人は起座呼吸といって横になっていられなく、座って息をすることになります。横になって寝られない日が続くということも聞きます。

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 肺の逆位について写真を参考にしてください。逆位のとき胸郭内の肺胞は重さで下に、すなわち喉の方向に垂れています。吸う行為は肺胞が持ち上がります。空間がある限り、圧力差(肋間筋、横隔膜の筋力)で膨らみます。吐く時は肺胞が重さで下に垂れているのですぐつぶれて十分吐くことができないことになります。

 背中や腰の緊張をとる方法としてあお向きで膝をかかえたり、膝を左右に倒す方法があります。
 もっと効果的なのは骨盤を前後に動かして、あごの連動性を利用する方法です。すなわち、それは小さい微妙な動きですが尾骨を床につけるとあごが引ける、尾骨を床から離す動きをするとあごが上がるという動きです。この方法のポイントは頭の重さが関係してあごが出たり締まったりすることで背骨の周りの筋肉が緩むのです。この動きをした後は背中や腰が床に着いている状況は背中腰の筋肉が緩んで骨そのものの重さで沈んでいることになります。

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またうつぶせの弓ポーズからあお向きの割座へ回転する方法ですが、これも頭の重さであごを出して首の緊張をなくして腰を緩めることで胴体を回していきます。この動きを楽にできる程度の腰痛であれば、この動きを行ってみると腰の痛みが軽減することがあります。(痛いことをすると悪化すること間違いありませんので注意してください。)

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このように私たちは重さのある星に生まれ、その重さに適応できた生物のみが生存を許されたことになります。
重さを意識した動きは滑らかで、気持ちよく、美しく、疲れないのです。