この本は2010/07にこのブログで話題にしていましたが、最近になってまた教室でテーマにしています。
改めて読んでみると前よりももっと学びが深くなりました。脳科学者のジル・ボルト・テイラーは全米の新進の研究者として将来を託されていましたが、40代の若さで血管の奇形のために脳梗塞で倒れてしまいました。それは左脳から出血、そして血がたまってしまったため左脳の機能がなくなり話せない、読めない、動けない状況になりました。
当然仕事はできませんが、しかし8年後にはもとの職場にカムバックした記録です。今回の興味深いところは、ベッドの上で横を向く、寝返り、そして体を起こす動作のところです。とにかく繰り返す、揺すって揺すってタイミングを計って横を向いたり起き上がったりしたところでした。
赤ちゃんが寝返り、ハイハイするために動き出すところそっくりです。赤ちゃんも彼女も右脳だけの世界で生きることを余儀なくなってしまいただ揺するということしかできなかったのでしょう。
普通の人がその病気になったらとっくにあきらめて揺することすらしないで寝たっきりになっています。しかしヨガの不得手なポーズのときに体を揺する彼女の繰り返す動作が参考になります。右脳で対処し繰り返し何かに気がつくまで、ただ揺することの大切さを知りました。これは同じことを野口体操の中で「ゆらゆらゆらゆら」という表現で述べています。動きをあきらめることは左脳、ただ続けるのは右脳ということでしょうか。
左脳は私たちが社会で生きていくためには予測し制御するすばらしい器官で、現代のような快適な生き方、より良い生き方をするには不可欠です。しかし同時に左脳は怒り、悲しみ、悩み、悲しみなどの感情を生み出し、これらは生命エネルギーをスポイルしていると著者は言っています。
このことは右脳だけの生活を余儀なくさせられていたからよくわかるのでしょう。同時に右脳は感謝ありがとうという言葉で途方もないエネルギーが体に流れて来ると言っています。このことは私のヨガの師である沖正弘師の言葉に感謝ありがとう懺悔すみません下座おかげさまで奉仕やらさせていただきますという言葉が生命即神、命を最高に喜ばす方法とそっくりなのです。
また著者は脳の判断能力を死後のことまで書いています。現代では左脳で考える人が多くなったのか、死後のことをあっさりと考えていますが、右脳の世界は永遠の命を得ることと言っています。これは古今の宗教家でも同じことを言いますし、「もとこちら会」の平井謙次先生も死とは服を着せ替えるだけで永遠に生き続けることだよと言われたことが忘れられません。仏教の輪廻転生につながるのは右脳で考えた世界だったのです。
自分で考えていることはすべて脳が考えていることで、それは左脳と右脳のバランスの中で現実を把握しているのです。左脳はよりよく生きることに役立ていますがともすれば自分を傷つける存在でもあります。右脳は不確かな存在かも知れませんが、本能的な生命力ともいえる力を秘めているのでしょう。
「奇跡の脳」から多くのことを学びました。そして右脳のすばらしさも学びました。この右脳の開発こそヨガを含めた各種「行ぎょう」だったのです。