ヨガの大切なこと 「我が人生はすばらしい」

 私が師事した沖正弘先生のヨガの思想の根本にあるのは「自己即神」です。私の机の前にその言葉の額が飾ってあります。ここには大きく「聖」とあります。これだけでは普通の人はなかなか理解できませんが、沖先生の考えは以下のようでした。Exif_JPEG_PICTURE
 自分自身を清らかにせよ。命の働きは神のごとき尊いものだ。命の声を聞け。せっかくいただいた命、その能力を粗末にするな。限りなく開発・強化せよ。正しい生き方の工夫と実行をせよ。悪い癖をのぞけ。心を磨き、心をととのえよ。感謝すること、懺悔すること、下座すること、奉仕することが最高の神の声だ。生きることに協力する愛の心をはぐくめ。無限の能力や知恵が誰にでも存在しているのだ。このことは一番、「命」がのぞんでいる。これらは今でもきびしい教えです。
 以下は沖先生の著書「ヨガの喜び」にある言葉です。「ヨガの一大特色は、「自己の中に神あり。」と自覚させ、自業自得を悟らせるところにある。自己の中の神とは、内なる自然のことで、私は「生命即神」と教えている。自分の生命とは、神であり、自然なのだ。自業自得とは、自分のかかえている悩みをつくったのも、それを解決するのも、すべて自分だということ。だから、自分の運命も、健康も病気も、悟りも迷いも、幸福も不幸も、あなたの自由自在になるはずだ。なぜなら、鍵を持っているのは、あなた自身だからだ。」
 沖先生の師である中村天風師は自分を変革する方法を「観念要素の更改」という言葉を使っています。これは潜在意識を変えること、「自分の思いこみ」を根本から変えていくことを言います。
軍事探偵として様々な活躍を終えた後大病になった天風師はインドでヨガ修行をして病を克服し、悟りを得て、ヨガの前身、心身統一法を編み出し、人生や運命、健康を成功に導く天風哲学へと導いた方です。その主なものは「観念要素の更改」という考えで、その基本は徹底した暗示法です。例えば下のような暗示の言葉がいくつかあります。これを潜在意識に刷り込む方法を行ないました。
「私は力だ 力の結晶だ なにものにも打ち克つ力の結晶だ だからなにものにも負けないのだ 病にも運命にも 否あらゆるすべてのものに打ち克つ力だ そうだ! 強い強い力の結晶だ」。
 天風師の教えは体や運命を強化するには心を強くしなければならないと言います。その心の積極性が絶対的な条件になり、それはいついかなる時でも「尊く、正しく、強く、清く生きること」であること。これを毎晩寝る前に徹底的に暗示をかける、起きたら今度は自分自身の眼を鏡で見て、また暗示をかける。このような徹底した心の積極を説いています。天風師の影響を受けた沖正弘師も同じように「生活行持集」をつくり、生活の中で生かされていることに感謝し、絶えず行いを訂正していく懺悔などを意識的に指導されていました。
 この心のあり方が自分を作っていることにまちがいありません。この自らの心は自分を取り巻く社会に対する心で、自分が社会をどのように思っているのかで自分の言動が変わります。社会に愛を感じているのか憎悪を感じているのかで本人の行動は変わってきます。愛すべき社会があるからこそ社会も自分を愛してくれるのです。自己の心を社会のためという心が強くなれば、いつの間にか社会から生かされ自分の目標も大きくなっていきます。偉人と言われている人たちがそうでしょう。人のためが自分を作っていったのです。
 他人に対する心も同じです。友人、家族、上司、部下、それぞれの心で言動を変えています。信頼されるか否かは自分の他人への心です。そして自分への心はどうでしょうか。自分を可能性のある存在と理解したとき、自分は成長するために学び、自分を大切にして、自信を持って困難へと向かいます。それこそ「いついかなる時でも尊く、正しく、強く、清く生きること」が「自己即神」「偉人」に変える可能性を持っているのです。
 自分自身を変えるために社会に対する、人に対する、自己に対する「心」を変える必要があります。劇的な変化はないかもしれませんが、長い時間をかけて必ず変わっていきます。すばらしい遺伝子を持った私たち。学習することが本能である私たち。わずかな違いを識別することができる私たち。そのようにして私たちは太古から進化してきました。ピラミッドを造り、万里の長城をつくってきた先人たち。現代の私たちもたくさんの可能性を秘めているのです。
 それを沖先生は不甲斐ない私たちを見て、「怠け者!」と活を入れ、「考えなさいよ」「やって見なさいよ」「依頼心をなくしなさい」「切羽詰まりなさいよ」「病気や悩みはありがたいことだよ」「あきらめるというかわいそうな自分を作りなさんな」などと「自己即神」を気づかせてくれました。