息を留めるクムバク
呼吸法に完全呼吸法というのがあって「吸って、留めて、息を吐く」の流れで行う。これだけだったら別に目新しいものは何もない。完全呼吸法にいわれは呼吸の究極の意味で使われているがその真意は十分に伝わっていない。せいぜい腹式、胸式といった呼吸筋を十分に使うことくらいの理解である。十分に吐き出すのも大切だが、肛門を締めて息を留めるというクムバクに注目しよう。クムバクはただ息を止めているのではなく肩の力、首の力を抜いて肛門を練るようにして止める。この辺はまだまだ奥が深い。プラティヤハラ(制感自律法)にかかわってくる。
クムバクの応用で生活に基づいたものもある。「お尻、キュキュ!」は肛門を締めること。いつでもどこでも「お尻、キュキュ!」は教室でも大事だと言っている。マタニティの人には必須事項だ。痔の人にも役に立つ。腹筋強化に役立つ。肛門括約筋を締めることで産道強化、柔軟に役立つし骨盤底筋そして腹筋にも刺激が行く。呼吸法で使う筋肉は大きくアバラの筋肉すなわち肋間筋と横隔膜であるがこの骨盤底筋の役割も大きい。
息を腹に吸うとき、横隔膜が下がっておなかの中が加圧されると骨盤底筋も膨らむ。吐くときはこの筋肉が締まり横隔膜が緩む(緩んで肺を加圧する)のに役立っている。骨盤底筋の動きを観察するにはうつ伏せでお尻周りのふくらみを感じるとよい。吸うときふくらみ、吐くときしぼむ。この骨盤底筋が弱くなると骨盤内臓器(泌尿器、生殖器、消化器の一部)に不都合が出てくる。内臓が垂れ下がって脱内臓になる。それについては新聞に書いてあったので参考にしてもらいたい。この記事はフランスで母体ケア(骨盤底筋強化など)をすることで出生率が回復したというものだ。(拡大可)
呼吸の仕組みは以下のサイト。
呼吸について
力を出すとクムバクの機会は多くなる。骨盤底筋も腹筋も強化され体力向上になる。それと同時に心にも関係しているのがクムバクである。ムカシから「尻締めろ」は気持ちを引き締める意味でも使われている。-精神一到何事かならざらん-心技体は武道の世界だ。ヨガの訓練でも丹田、仏性という言葉で説明される。丹田は体の中心であり、仏性は心の中心。仏性は最高の判断力と人間の共通意識と説明されている。宗教でいう「行」やスポーツにしても心が養なわれることを強く言うのはこの仏性開発のためであろう。心身統一の要(かなめ)はこのクムバクだ。注意をひとつ。クムバクは非常に有益な方法だが間違って行うと弊害も大きい。力んだような息の止め方をすると血圧が上がったり痔になったりするという。しっかりと下半身に力を込めて行うことだ。
(2007-03-29)