リラックスは知恵の製造法
くつろぎのポーズをインド語に訳せば屍(しかばね)のポーズ(Savasana)という。はじめは「えっ」と思った。今はそうでもないがやっぱり抵抗はある。しかばねというのは死体であり、なきがら、むくろと言う意味である。ヨガはインド発祥の行法哲学(ぎょうほうてつがく)だ。だからヨガにはインド文化がたくさんあって、しかばねもそうだ。
いろんな旅行見聞の中に聖なる川、ガンジス川で清める沐浴をしているその向こうから人の死体が流れてきたり犬が死体をむさぼっている記事がある。私たち日本人の生活の中には死体は身内以外にめぐり合うことがない。清濁を併せ持つ、インド文化のたくましさを感じる。でもヨガの仰向きのリラックスは「くつろぎポーズ」の名前がよい。

ヨガのアサナではポーズをいくつか作って、くつろぎのポーズをつくる。緊張と弛緩のバランスを得ているのだ。ポーズは緊張の中のリラクセーションが目的であり、くつろぎのポーズは弛緩の中のリラクセーションである。詳しくは以下のサイトでも扱っている。
レッスン一覧(くつろぎの公式)
レッスン一覧(イメージトレーニング)

ストレスの多い毎日の中でヨガをきちんとできる環境があればいいけれど、できなかったり、より強いストレスが襲いかかることもある。そんな時くつろぎのポーズの中でも使う自律訓練法が役にたつ。基本はイスや仰向きだがくつろぎのポーズよりも応用が利いていつでもどこでもが良い。慣れれば電車やバス中や会議中などで練習ができる。この訓練の究極は四六時中のリラクセーションなのだから。リラクセーションはけっしてなまけもののを作る訓練ではない。必要なときはせっかちな人よりもアイデアがわき行動的になれる訓練である

キーワードは「気持ちが落ち着いている」 これだけである。エミール・クーエは自己暗示法の基本を説明している。「くりかえすこと、簡単なこと、そして努力してはいけない」、この三つである。「気持ちが落ち着いている」はそれに合致している。そしてイスなどに座っているときはこれにプラス、「手足が重くて、温かい」を加える。これでいつでもどこでもリラクセーションだ。不眠にも効くかもしれない。注意がひとつあって、筋肉弛緩が深くなるので日常で必要な緊張に戻すために急に覚醒しないで指を動かし腕を動かししながら目覚める、弛緩消去を行うことである。

リラックスしてアイデア、知恵が湧くところは、昔は馬上枕上厠上と決まっていた。今は積極的に瞑想や座禅を行うと不思議に打開策がわくものである。すぐには出てこないが必要なときにはきちんとご利益(りやく)があるものだ。八方塞(はっぽうふさがり)と言うがどこかに方法があるのだ。それを導くのが知恵という。知恵はインド語で般若、般若を身につけるには「無」。やっぱりリラックスなんだ。ゼロを作ったインド文化、無の世界はやっぱり無尽蔵なのである。
(2006-12-21)


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