身構え・気構え
クラス授業が始まる前に、ヨガは体操であるかどうか聞いてみた。準備運動は必要かも聞いてみた。体操ではないが準備運動は必要だという。私もスタッフもクラス授業の始めの前半は足や手を刺激したり、指体操などをしてアサナにつないでいく。

でも今日は違った。いきなりアサナである。みなさんはそんな進め方に、戸惑いもなくついてきてくれた。

体操という言葉は明治以後の言葉であり軍隊の訓練と一緒に入ってきたものらしい。それがスポーツになり準備運動や整理体操は不可欠のものになった。いわゆるウォームアップ、クールダウンである。筋肉や神経系統の働きに重要な役割をする。無理やり体操をすると障害が起きると警告している。私もこれは否定していないし、教室でけいれんやぎっくり腰になられたら互いに災難である。
ところで身体を使う職業の人は仕事前に準備運動をしているだろうか。大きな会社や事業所で行うラジオ体操は正確にやっている人がいないので論外である。運動選手のような綿密なウォームアップなど普通はしないでいきなり仕事に取り掛かる。

私が習ったある外国の先生のヨガはいきなり立ちポーズから始まる。別にぎこちなさなど感じさせない。 昔の剣豪など果し合いの前にストレッチ体操をしたという小説に出会ったことがない。大工さんもお百姓さんも運送屋さんもヨガも体操でないから準備運動は不要である。

そのかわり身体に対して四六時中、独特な扱い方をしている。すなわちそれが身構えである。身体が生活になっている。
朝、起きてすぐに準備運動もしないで前屈のポーズを作ることもある。別に違和感はない。動きが良くなるのに時間がかかるだけである。それもちょっとだけの時間だ。次々にポーズを作っていくとそれがウォームアップになっていく。気持ちも身体に言い聞かせるように呼吸やイメージを確固たるものにしていく。

夏の高校野球が終わった。選手たちはたくましい面構えに変わっていく。16歳17歳の高校生であるのに。彼らにとって甲子園は気構えが熟成する場所である。一人一人の選手がどんどん変わっていく。鳥肌が立つくらいの若武者になる。
身構え、気構え、心構え。ヨガが体操でない意味で大切な言葉だ。一言でいえば覚悟である。
(2006-08-25)


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