負けて参っておまかせで
このタイトルはある本のどこかでそれらしいところを読んだ。そうだそうだと実感することしきりで早速、ヨガの動きの中で使ってみた。いいねぇ。「負けて参っておまかせで」。力ずくでなくてもよいし、痛いところから逃げても、かっこわるくても気持ちが良くて良い動きなのだ。
これを使うと仰向きから起き上がる、腹筋運動だって力ずくではないのだ。重さに負けて、お尻がしっかり床につぶされて、押されると上半身が浮いてくる。これが本当の腹筋運動だ。
前屈のポーズでも倒れないから、倒したいから、痛いから、力を入れる。悲鳴を上げる。発想を変えて重さに負けてみたらどうだろう。膝の力も抜いてみたらどうだろう。これっていい感じで倒れていないかなぁ。不恰好かもしれないけどいい気持ちだ。
ヨガの中で難しい力わざのポーズといわれているものは、たいていどのくらい「自分が参っているのか」で、出来、不出来が決まる。
逆立ちだって肘と頭を床に付けてバランスをとるけど、床で重さを実感するともっと安心していいのだということが判る。床が硬ければ硬いほど安定する。
アーチのポーズも手で床を押させてもらうのだ。ありがたくていねいに、そぉっとである。そんなとき首の力が抜けて肘が伸び腰が緩む。
私たちは負けるのが嫌いである。参ったも言えない。そのように育てられた。おまかせも表面だけ。でも大きな大きな存在の中で人の力なんて知れている。大波に向かって抵抗するより流されるしかないだろう。重さも地球重力という大きな力だ。そのある本の中に重さは「神」とも言えると書いてあった。
動きは「負けて参っておまかせで」を大事にする。重さという力を使わせていただくことでスキルを向上することが出来ると思う。歩く走るもそうだ。そのスキルこそがサルとは違う、人のスキルになったのだと思う。
所詮、動きは重力の中で存在するものである。寝返りひとつとっても抗重力のおかげで楽に動ける。寝返るときは寝返るほうの肩を床に押すと反対側が上がって寝返り完成だ。力を入れてはいけない。
この重さを意識した動きは階段を上るときに抗重力を意識すると楽に昇れる。片足でステップを押すと次の反対の脚は楽に上に上がる。これを繰りかえせばいいのだ。寝返りと同じだ。腹筋も先に述べたと落ちだ。抗重力である。
これを少し高等にしたのが割り座法で仰向きになり、手は足首を持ち、そっと片方の胴体に重さをかけていくと反対側が持ち上がり首はだらりと垂れ、極限のところでごろんとうつ伏せになって弓のポーズになる。その動きは床に吸い付いているが如しである。
きっと蛇の動きの蛇さんはこの動きのエキスパートなのだ。にょろにょろと体重を移して行く。
ある本(原初生命体としての人間 箇所不明)
(2006-08-07)